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GMP
誰もが気になる品質監査 「Auditor(品質監査者)」はスーパーマンか? (前編) GMP 2024/11/05

当社が運用する「GMP Platform」は、医薬品・医療機器・再生医療等製品・化粧品の製造に携わる皆様を対象に、GMPに係る最新の情報や現場で培われたノウハウを共有し、お悩みの課題を解決に導く 情報ポータルサイト (無料) です。

本稿は、2016年9月2日に掲載の GMP Platform 記事「Auditor(品質監査者)はスーパーマンか?」 を一部再編したものです。


 

<GMPの理解>

私が製造委託先への品質監査を初めて経験したのは、今から20年あまり前のことです。 当時の私は品質保証部門に異動してから日も浅く、同行した自社工場の技術者に実務の大半を担ってもらう「名ばかり監査者」でした。 見よう見まねでスタートしてから、多くの失敗も重ね、延べ100件以上の監査を実施してきましたが、品質監査は、数ある品質関連業務の中でも極めて特殊な業務だと感じています。
まず、品質監査の規制上の扱いを確認してみましょう。 例えば、日本のGQP省令の第10条には、こんなことが書かれています。
当該製造業者等における製造管理及び品質管理が、法第十四条第二項第四号及び第十八条第三項の規定に基づき厚生労働省令で定める基準及び事項並びに第七条に規定する取決めに基づき適正かつ円滑に実施されていることを定期的に確認し、その結果に関する記録を作成すること。
法令の表現は難解ですが、要は、「GMP省令に基づき、製造所のGMPが適正かどうか確認しなさい」ということです。 適正かどうかは、ICHの品質ガイドラインやPIC/S GMPガイドにも照らして判断することになるので、監査者は、これらのガイドラインに示されたGMP要件を知っている必要があります。 ところが、ガイドラインの条文の多くは一般論・抽象論で、実際の事例を経験しないと、なかなか本質の理解に辿り着けないかもしれません。監査先で見聞きすることも「事例の宝庫」なのですが、鶏が先か卵が先か・・・・

<監査業務の特殊性>

GMPの理解を深めることは、医薬品製造に関わる全て活動に共通の課題ですが、品質監査では、監査先業者の職場、すなわち相手先のホームグラウンドで業務を行うという特殊性が加わります。 監査を実施するのは調達者・委託者で、供給者・受託者にとっては「お客様」ですが、顧客に干渉されたくないのも人情でしょう。 つまり、監査者は「招かれざる客」として、アウェーの環境で業務を行うことになるのです。
監査先での滞在期間は1日~3日くらいが通例で、この間に抽出できる情報には限りがあるにも関わらず、監査先の製造・品質活動の全容を評価しなければなりません。 加えて、望まれる改善について相手方と合意し、改善の実施をコミットしてもらう必要もあります。 このような業務特性から、ISO 19011:2018(JIS Q19011:2019)「マネジメントシステム監査のための指針」の7.2.2「個人の行動」では、次のような特質・行動が求められています。
監査員は、箇条 4 に示す監査の原則に従って行動するために必要な特質を備えていることが望ましい。 監査員は、監査活動を実施している間、専門家としての行動を示すことが望ましい。 望ましい専門家としての行動には、次の事項を含む。
  • 倫理的である。 すなわち、公正である、信用できる、誠実である、正直である、そして分別がある。
  • 心が広い。 すなわち、別の考え方又は視点を進んで考慮する。
  • 外交的である。 すなわち、目的を達成するように人と上手に接する。
  • 観察力がある。 すなわち、物理的な周囲の状況及び活動を積極的に観察する。
  • 知覚が鋭い。 すなわち、状況を認知し、理解できる。
  • 適応性がある。 すなわち、異なる状況に容易に合わせることができる。
  • 粘り強い。 すなわち、根気があり、目的の達成に集中する。

 

( 「後編」 へ続く )


 

執筆者について

 株式会社シーエムプラス GMP Platform シニアコンサルタント
高橋 治

経歴
1987年日本鉱業(現 ENEOS)入社、治験薬GMP体制の立ち上げ、化学合成原薬の製法開発等に従事。 2002年以降、住友製薬(現住友ファーマ)、持田製薬、ノバルティスファーマで品質保証部門に勤務、品質監査を含むGQP業務を担当。 2013年9月にシーエムプラス入社、2014年4月に欧州化学工業連盟原薬委員会の監査員認定を取得、現在に至る。


 

関連プログラムのご紹介

当社では、教育訓練サービスを提供しております。 当コラム記事に関連したテーマのプログラムもございますので、関心をお持ちになられたお客様は、受講をご検討ください。

「GMP Auditor育成プログラム」
 https://www.gmp-platform.com/seminar_detail.html?id=131

開催趣旨  2005年のGQP省令施行により委託先や原薬製造業者の GMP 運用状況の確認が義務づけられ、多くの実地監査(Audit)が実施されるようになりました。 その後、ジェネリック医薬品の使用促進による原薬調達先の増加や、2012~2013年のPIC/S GMP導入に伴う製剤添加物等への対象拡大により、品質監査の件数は増加傾向にあるようです。 製薬企業では、監査員(Auditor)の不足にお悩みのケースも少なくないと思います。

そのようなお悩みに応えるため、GMPを網羅的に学習できるeラーニングと3日間の集合研修による製薬企業向けの体系的なGMP Auditor育成プログラムを提供いたします。

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締切日  2025年2月14日(金)
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