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本稿は、2016年9月2日に掲載の GMP Platform 記事「Auditor(品質監査者)はスーパーマンか?」 を一部再編したものです。
<監査業務の特殊性>
- 倫理的である。 すなわち、公正である、信用できる、誠実である、正直である、そして分別がある。
- 心が広い。 すなわち、別の考え方又は視点を進んで考慮する。
- 外交的である。 すなわち、目的を達成するように人と上手に接する。
- 観察力がある。 すなわち、物理的な周囲の状況及び活動を積極的に観察する。
- 知覚が鋭い。 すなわち、状況を認知し、理解できる。
- 適応性がある。 すなわち、異なる状況に容易に合わせることができる。
- 粘り強い。 すなわち、根気があり、目的の達成に集中する。
- 決断力がある。 すなわち、論理的な理由付け及び分析に基づいて、時宜を得た結論に到達することができる。
- 自立的である。 すなわち、他の人々と有効なやりとりをしながらも独立して活動し、役割を果たすことができる。
- 不屈の精神をもって活動できる。 すなわち、その活動が、ときには受け入れられず、意見の相違又は対立をもたらすことがあっても、責任をもち、倫理的に活動することができる。
- 改善に対して前向きである。 すなわち、進んで状況から学ぶ。
- 文化に対して敏感である。 すなわち、被監査者の文化を観察し、尊重する。
- 協力的である。 すなわち、監査チームメンバー及び被監査者の要員を含む他の人々とともに有効に活動する。
残念ながら、私自身は、こんなスーパーマンではありません。 むしろ、知りたい情報を得られなかったとか、要望した改善を拒否された苦い経験を思い起こすと、ISOに示された行動ができていなかったと思い当たることばかりです。 個人の「特質」は一朝一夕に備わるものではないと思いますが、期待される「行動」を心がけたいものです。
<品質監査のコスト>
GMPを含む品質システムでは「品質部門の独立性」が世界共通の要件となっています。 企業活動で利益を追求するのは当然なので、当面の利益より患者保護を最優先とする判断が求められる品質部門は、営業部門や製造部門から圧力がかからないように守られているとも言えるでしょう。 そのような環境にある品質部門に所属していると、実は私自身がそうでしたが、コストには無頓着になるかもしれません。
品質監査にかかるコストには、交通費・宿泊費のような目に見える経費のほか、監査者の人件費(固定費)が含まれます。 企業における人件費は「職員への支給額の1.7倍」などと言われていることを考慮すると、監査者への高い期待(GMPの深い理解、スーパーマンのような資質・行動)に応えられる中堅~ベテラン社員の人件費は、中堅製薬企業で年間 1,500万円以上ではないでしょうか。 例えば、1件の監査を2名で実施して、準備や報告を含めて延べ5日で完了すると、監査1件に掛かる人件費は 60万円以上ということになります。
1,500万円 × 2 人 ×( 5 日 / 年間 240 営業日 )= 62.5万円
年間10件なら600万円、年間20件なら1,200万円・・・
これほどのコストを費やしていること考えると、それに見合う効果を上げなければなりません。 「省令を守らなければならない」という受け身の姿勢だけでは、もったいない限りです。
<監査から得るもの>
冒頭で引用したGQP省令第10条やPIC/S GMPガイド Part I 第7章『外部委託作業』からは、「委託側は受託側を管理しなさい」というニュアンスも感じられます。 「管理せよ」と言われると、ついつい、監査者は「上から目線」になりがちかもしれません。 しかし、監査先の受託者や供給者は、サプライチェーンの一翼を担うビジネスパートナーです。実地の品質監査では、相手先の職員とface to faceで議論できるので、相互の信頼関係を深める絶好の機会となるでしょう。 また,生産活動の現場に立ち入り,自社とは異なる管理手法にも触れることで,監査者が生きた知識と経験を蓄積することも期待されます。 そのために、監査者が力を磨くことが重要・・・・・
また「鶏が先か、卵が先か」ですね。
執筆者について
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株式会社シーエムプラス GMP Platform シニアコンサルタント 高橋 治経歴 1987年日本鉱業(現 ENEOS)入社、治験薬GMP体制の立ち上げ、化学合成原薬の製法開発等に従事。 2002年以降、住友製薬(現住友ファーマ)、持田製薬、ノバルティスファーマで品質保証部門に勤務、品質監査を含むGQP業務を担当。 2013年9月にシーエムプラス入社、2014年4月に欧州化学工業連盟原薬委員会の監査員認定を取得、現在に至る。 |
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https://www.gmp-platform.com/seminar_detail.html?id=131
開催趣旨 | 2005年のGQP省令施行により委託先や原薬製造業者の GMP 運用状況の確認が義務づけられ、多くの実地監査(Audit)が実施されるようになりました。 その後、ジェネリック医薬品の使用促進による原薬調達先の増加や、2012~2013年のPIC/S GMP導入に伴う製剤添加物等への対象拡大により、品質監査の件数は増加傾向にあるようです。 製薬企業では、監査員(Auditor)の不足にお悩みのケースも少なくないと思います。
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