工場建設における
詳細設計~施工
建設段階で管理しなければならない3大要素は、品質、コスト、スケジュールです。建設工事がスタートすると施工計画・要領、検査要領、施工図・製作図といった多くの図面が提出され、発注者側は承認が求められます。これらの承認行為は、品質を確認しつつ、スケジュール通りに進めるためにタイムリーに行う必要が生じます。
詳細設計~施工段階の実施事項
プロジェクト遂行の枠組みの構築ー「プロジェクト遂行要領書」PEP
プロジェクト遂行要領書(Project Execution Procedure, 略してPEP)はプロジェクトの目的、工程、関係工事企業、担当窓口、図書管理要領などを明確にし、関係者にどのようにプロジェクトが遂行されるのか、認識を共有するための文書であり、円滑なプロジェクト運営のよりどころとなるものです。
PEPに記載すべき事項の例は以下のようになります。プロジェクトの特性を考慮し、適宜必要な項目を設定します。
- 1)プロジェクトの目的
- 2)マスタースケジュール
- 3)関係企業組織
- 4)各社連絡窓口担当者
- 5)連絡方法
- 6)質疑・技術図書確認方法
- 7)図書発行手順、図書承認手順
- 8)図書変更手順
- 9)定期会議体の設置
- 10)工事検査立ち合い区分
- 11)検査立ち合い区分、立会検査申請手順
- 12)官庁検査
- 13)検収条件と手順
- 14)完成図書要求
- 15)契約上の追加・変更管理要領
スケジュール管理
スケジュール管理の羅針盤はマスタースケジュールとなります。マスタースケジュールには、建設会社の作業項目だけでなく、工場オーナー側の直接発注となる生産機器についても発注/製作/現場搬入の時期を記載し、またバリデーションの主要な活動も含めて記載します。
CMrはこのマスタースケジュールに基づき、関係者が遵守するようリードしていきます。
実行予算管理
建設会社と契約締結した見積書をベースとします。詳細設計や工事が進捗するに従い、変更・調整の必要が出て、それに伴い建設会社から追加変更請求が出されますが、それを継続的にマネージメントしていくことになります。建設会社やサプライヤとの交渉を重ねていくため、プロジェクト責任者やCMrは契約条件を精読し、交渉シナリオを描く力量が必要となります。
また、発注者側のリスク管理として、工事契約金額とは別に追加費用発生を見込んだリスクコンティンジェンシー(予備費)の枠を確保しておくことも通例として行われます。
調達管理
調達管理は納期、品質の面で管理が必要となります。特に長納期品となるもの(生産機器はもちろん、鉄骨ロールなどの建築材料、空調機器などの大型機器など)について、スケジュール立案の初期段階でそれらを拾い出し、発注から納期までの主要イベント(仕様決定、材料発注、検査など)を考慮してスケジュールを調整していきます。品質管理では、サプライヤーに材料証明や検査項目とその手法を提出してもらい、確実に実施していることを確認します。
官庁申請・検査
工事建設には官庁申請が伴います。国内であれば、建築確認申請を始め、開発許可申請、省エネ適合判定、工場立地法など工事前に多くの申請・届け出作業が必要となります。また、工事期間中、工事完了時にも所轄官庁による検査が実施されます。スケジュール立案の早い段階で申請届け出項目をリスト化し、申請予定を明確にする必要があります。また、地方公共団体や当該敷地の特性より申請項目が異なる場合があるので注意が必要です。一つの申請承認が他の許認可の条件になっている項目もあり、申請項目をリスト化するときはそれらの関係性も明確にしておく必要があります。
海外では法整備が不十分、進行中の国も少なくない為、公表されている法律に沿って遂行していても予期せぬ指導を受けることがあります。当該国事情に十分経験を持つコンサルタントを採用することで、実質的な申請期間を見込んだ計画を建てられます。
シーエムプラスでは…
生産施設に精通したチーム
CM Plusは、生産施設のプロフェッショナルです。CMr(コンストラクションマネージャー)をはじめ、生産施設の特性を理解し、経験も豊富なエンジニアを備え、チームでお客様の品質を守ります。建築設備に加え、お客様の直接発注となる生産機器を含めた調整も行えるのが強みです。複雑な製剤機械工事と建築工事の工程調整、生産機械試運転開始を意識したユーティリティ設備や空調設備など立上げ計画、清掃性や防虫を考慮した施工指導など生産施設の特性を理解したCM Plusが建設工事をサポートします。
コントラクター、サプライヤーとのコミュニケーション
どのような発注形態でも、発注者の意向をコントラクターやサプライヤに正確に伝える責務がCMrにはあると考えます。このために会議体、電話、メールなどが利用されますが、近年はコロナ禍のため非接触による業務遂行が進んだこと、また関係者の所在が地球規模になっていることよりインターネット回線を利用したWEB会議システムの活用が盛んになっています。これらのコミュニケーションツールの利用、ルールなども業務遂行計画書(PEP)に記し、円滑なコミュニケーションを推進します。
スケジュール管理、
進捗モニタリング
マスタースケジュールに基づき、関係者が遵守するようリードしていきます。具体的には、建設会社、機器製作会社など関係者が出席する統合工程調整会議の場を定例として設け、それぞれ詳細の工程を提出して工程確認・進捗確認を行っていきます。工事期間は加えて現場巡回・確認を行います。スケジュール管理で重要なことは、主要マイルストーンの達成と出来高です。マイルストーンは各工事間の関係性に留意して管理します。マスタースケジュール上に各工事間の関係性を示して管理していきます。
出来高は進捗度をモニタリングします。進捗度(プログレス)を数値として算出し、グラフ等で視覚化して管理していきます。
プログレスグラフの例
変更管理、コスト管理
変更管理は業務連絡書などのフォームと供に、図面とリストを最大限に活用していきます。プロジェクト関係者が明確に理解できること、また抜けや落ちがなく修正されていくことが肝要です。変更は小さなものから大きなものまで多岐に渡りますが、それぞれに適した変更管理を行い、根気よく丁寧な作業を必要とします。また建設会社をはじめ関係者との関係性も大切になります。
変更管理はコスト管理とスケジュール管理に絡みますので、コスト、スケジュールへのインパクトの有無、その影響度、変更の原因の帰属を明確にして管理を行います。
追加項目の協議を行う会議は、プロジェクトの規模にもよりますがプロジェクト遂行中も定期的に開催して協議を進めます。
ドキュメントコントロール
建設工事がスタートすると多種多様な図書が提出されます。これの図書の中には修正を要するものも多く含まれ、改訂版が提出されますので、延べで提出される図書数は1000件を超えるプロジェクトも珍しくありません。適切な施工・検査が行われる為には、この膨大な図書中で確定版やその後の変更管理を確実に実行することが必須です。CM Plusは独自に開発したドキュメント管理システムCORRESSAによって、図書のステータスを管理し、web上で最新ドキュメントとその管理状況を貴社や建設会社、サプライヤーと共有します。
CORRESSAの特徴
CORRESSAには、前述のドキュメントコントロールとコレスポンデンス機能があり、各サプライヤー間の業務連絡も含めてその通信履歴を管理することができます。CORRESSAは、セールスフォース・ドットコムのクラウド基盤上に開発されたアプリケーションですので、安定稼働する基盤と堅牢なセキュリティが確保されており、ネット環境下であればどこからでもアクセスすることが可能です。
他のフェーズを詳しく見る
関連コンテンツ
お役立ち情報
弊社の運営する情報発信サイト「GMP Platform」の記事もぜひご参考ください。
タイトルに「医薬品工場建設」とありますが、その内容は医薬品工場に限定されずあらゆる業種の工場建設に適用できる内容となっています。
「医薬品工場建設のノウハウ」
医薬品工場建設プロジェクトの成功へのノウハウを集約。プロジェクト遂行の枠組みの構築PEPから実行予算管理、工事期間の調整事項を解説。
医薬品設備建設における「オーナーのプロジェクトマネジメント2nd改訂版」
「オーナーの建設プロジェクトマネジメント」についての連載。詳細設計から製作・施工ステージまで。