医薬品工場建設における事業構想
治験薬設備を具体的に検討したい、臨床試験が計画通り進んでおり生産工場を検討したい、工場の老朽更新を行いたい、といったように、新工場の検討が必要となった時、まず初めのステップとして事業構想の策定とフィージビリティスタディを行います。
このステージでは、具体的な設計を進める前に、類似案件を参考として、事業構想を策定します。また、多くの場合、異なる建築候補地、既設工場の活用、CDMOの活用など複数の案を比較します。そのため、この時点では詳細な設計行為を行わず、過去事例を参考に推定した工期と費用を用いて比較を行います。
医薬品工場における事業構想の流れ
基本要件の整理

事業構想の要件を整理します。

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・生産品目、種類・生産能力の要件定義
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・立地・達成時期などのビジネス要件定義・会社の中・長期計画との関連性について定義
事業構想案の探索・整理

基本要件に基づき大きな方針での可能性を探ります。
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・新製品生産立ち上げ、生産能力増強の場合
→ ① 新工場の建設、②既設工場の改修・増築、③CDMOへの生産委託など -
・老朽化設備の更新の場合
→ ①新工場の建設・移転、②既設工場の改修など
一般的なメリットとリスク
メリット | 事業上のリスク | |
---|---|---|
①新工場の建設 | ・計画に制約条件が少ない | ・初期投資額が大きい ・売り上げが計画に達しない場合は、初期投資のインパクトが残る ・人員の採用計画など広く検証が必要 |
②-1既設工場の 大規模改修 |
・既存の資源を有効活用できる (生産設備、倉庫、熟練工) |
・実現できる範囲が限定されることがある |
②-2既設工場の部分改修 | ・既存の資源を有効活用できる (生産設備、倉庫、熟練工) |
・実現できる範囲が限定されることがある |
生産委託 | ・投資額を抑えることができる ・委託先の技術力を活用できる |
・技術流出のリスクがある ・委託先の技術評価が難しい ・売り上げが伸びた場合は提携先と利益を配分する |
次の検証ステップは、上記のメリットの検証やリスクの評価がメインになります。
実現可能性の低い案については、この段階でふるいに落とすことも必要です。
事業構想案の検証

各事業構想案を掘り下げて検証します。

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・類似案件の実績、過去事例に基づいてスケジュール、コスト、床面積などを概算
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・建設予定地の調査
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・資金調達方法の検証
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・既存生産ラインへの影響の検証
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・新築・改修規模(延床面積)の検討
→ 基本要件と類似する案件を参考に、必要な延床面積を概算します。 -
・スケジュールの検討
→ プロジェクト開始から販売開始までの期間である,基本計画,基本設計,引合,詳細設計,施工,試運転(IQ,OQ,PQ,PV),
安定性試験の期間を類似案件を参考に見積もります。 -
・コストの見積
→ 延床面積とスケジュールから建築に係るコストを見積もります。 -
・建設予定地の検証
→ 新工場の場合、想定している延床面積が立てられる土地候補があるかどうか調査します。土地取得や造成に係る費用も見積もります。
→ 既設工場の改修の場合、既存生産ラインへの影響を見積もるために、改修計画を具体的に作成して検証します。(例:下図)
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・資金調達計画の検証
→ 事業構想の実現に必要となる資金が調達可能かを検証します。
事業構想案の比較・絞り込み


検証した情報を基に各事業構想案を比較し絞り込みます。
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・スケジュール、コストの概算を基に各種構想を比較
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・1~2案まで構想案を絞り込み
比較表の例
条件 | スケジュール | コスト | 生産能力 | リマーク | リスク | |
---|---|---|---|---|---|---|
A案 | 新設・A市 | 〇 | △ | ◎ | BCP計画とも整合 | 建設予定地の値上がり・採用難 |
B案 | 新設・B市 | 〇 | △ | ◎ | 補助金ある | 補助金条件厳しい |
C案 | A工場大改修 | △ | 〇 | 〇 | 既設生産停止が必要 | |
D案 | B工場改修 | ◎ | ◎ | △ | C品種の生産拡大との両立不可 |
◎:基本要件のWantまで実現可能〇:基本要件のMustを実現可能△:基本要件に対して制約あり

事業構想のステップでは、工場建設の基本要件に基づき想定し得る全ての事業構想案を抽出し、検討します。抽出した事業構想案に対して、判断軸を設定し、検証していくことで次以降のステップにおける手戻りをなくすことが重要になります。
シーエムプラスでは…

基本要件の整理
第三者の立場でヒアリングを行い、基本要件の整理を行います。事業構想時に求められる基本的な要求項目について、医薬品工場に特化したリストを有しており、過不足なく要件を整理することが可能です。CM Plusが保有する過去の多くの類似案件のデータを元にフィージビリティスタディを行うことが可能です。
コスト・スケジュールの算出

この時点では、具体的な設計行為を行うまで時間と設計コストを掛けられないため、より近い類似案件の情報を持っているかが勝負になります。CM Plusは、低分子原薬からバイオ医薬品、注射製剤から固形製剤、再生医療等製品と多岐に渡る実績データを保有しておりますので、より具体的で信頼性が高いコストとスケジュールの予想が可能です。
法令関係

立地条件によっては建築基準法の制約があり、扱う原料によっては消防法等の規制があるため、法令対応費用が無視できないケースがあります。CM Plusでは、関連する法令に関するコンサルティングも可能で、法令対策費用も見込んだ事業構想が可能です。
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