お客様の声
Case Studies

株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ ) 様

クラウドコンピューティングサービスを支える、
日本初のコンテナ型データセンターを島根県松江市に構築。

IIJ様は、外気冷却方式を採用した日本初のコンテナ型データセンター「松江データセンターパーク」を、島根県松江市に構築。2011年4月に稼動を開始しました。クラウド時代のニーズにあった低コスト、高いサーバ収容効率、容易なスケールアウトを実現する次世代のデータセンター。株式会社シーエムプラス(CM Plus )は、このプロジェクトのプロジェクト・マネジメント業務、コンストラクション・マネジメント業務を担っています。IIJ代表取締役社長の鈴木幸一氏に、プロジェクトの目的や今後の計画についてお話しを伺いました。

新しいことをやるのがIIJ の存在意義

IIJ は創業以来、常に日本のインターネットビジネスの最先端を切り開いて来られました。今回も日本初のコンテナ型データセンターを建設されました。

  • 株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)代表取締役社長鈴木幸一氏

    株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)
    代表取締役会長(取材当時:代表取締役社長)
    鈴木幸一氏

  • 松江データセンターパーク(CG)

    松江データセンターパーク(CG)

鈴木幸一社長(以下鈴木):4、5年前から、電力の削減、拡張のしやすさ、外気を空調に使えるなどのメリットがあるコンテナ型データセンターの構想はありました。2年前から、空調機器メーカーやコンテナメーカーと研究・開発を行ってきましたが、日本の場合は土地が高いのでなかなか実現できませんでした。データセンターの運用コストの約6割が電力。いかに消費電力を削減するかが大きな課題でした。特に空調にはかなりの電力を必要とします。ですから、外気を空調に使う研究をしていたのです。やっとPUE(電力の使用効率)で満足のいく値が出るようになったので、今回の「松江データセンターパークプロジェクト」をスタートさせました。

IIJ は先見性があるとよく言われます。

鈴木:先見性があるというか、やる勇気があるだけです(笑)。今後、こういう方向になるだろうと予測したら僕はやってしまう。いつ実現するのかというのは本当に難しい。日本は全体的に新しいことをやりたくないという人が多い。しかしIIJは、新しいことをやっていくことが会社のレーゾン・デートル(存在意義)です。新しいことをやり続けるのは、結構、骨ですが、そこをやるのがIIJ 。お客様も、アメリカの企業の場合は、新しいものが出ると「まず使ってみるか」となりますが、日本の企業の場合は「どこの企業が使っていますか」となるので苦労します。でも、新しいことをやらないとビジネスは面白くないでしょう。日本初のコンテナ型データセンターも、そのひとつの現れですね。

クラウドもかなり以前に考えられていました。

鈴木:クラウドは、もともと90年代に考えていました。将来、企業はシステムを自社で持たなくなると考えてデータセンターを作りましたが、早すぎて営業が難しかったこともあります。マーケットのニーズとぴったりタイミングを合わせることが難しいのです。僕はいつも早すぎて失敗ばかりしている(笑)。しかし、「松江データセンターパーク」は、僕等がやろうとしていることと、お客様のニーズがそんなに離れていないような気がします。今回も、どういう結果が出るかは分かりませんが(笑)、しかし業界の中でだいぶ先行しました。

10年以上前に、今日のクラウドコンピューティング時代を予想されていたのがすごいですね。

鈴木:僕から言わせれば、変わるのが遅すぎます。アメリカなら、こういう風になると思ったら1年でマーケットが出来上がります。日本だと下手すると6、7年かかります。全体がコンサバティブになっている。

IIJ は特に技術力に定評があります。

鈴木:IIJの創業はNTTドコモと同じ1992年で、予定ではNTTドコモより大きな会社になるはずだったのに、NTTにインターネットをすすめたのがいけませんでした(笑)。技術的にも協力して“OCNの父”とからかわれましたが、結局、ある部分のマーケットまで取られました。NEC のBIGLOBEにしても、みんなうちのパッケージでサービスを始めたのですよ。
当時は、“自分たちが先頭を走ってインターネットの世界を作っている”という自負がありました。PPPというダイヤルアップも、IIJが開発した技術です。インターネットの歴史に残るものの、日本ではあまり評価されていません。しかし、海外だと高く評価されています。IIJの技術により、日本のインターネットのパイが大きくなったからよいのですが、IIJのビジネスとしてはどうだったでしょうね。

コンテナ型データセンターを全国に作りネットワーク化

IIJ以外でも、コンテナ型データセンターを計画している企業はあるのでしょうか。

鈴木:あると思いますが、まだ都市型データセンターを作られる企業が多いですね。しかし、サーバの利用規模が以前とまったく違ってきています。桁が違います。1社1万台使うところも出てきています。それだけに、従来の都市のビルの中にデータセンターを作るという発想だけでは、なかなかお客様のニーズにお応えするのは難しいのではないかと思います。お客様も多くのサーバをデータセンターに預けるとなると、コストもより重要になってきますしね。

低コストを実現する手段の一つが、コンテナ型データセンターなのですね。

鈴木:コンテナモジュールによるデータセンターを全国に作って、完全にネットワーク化しておけば、サーバをどこに置いてもよくなります。ディザスタリカバリ(災害被害からの回復措置、被害を最小限の抑えるための予防措置)やBCP(事業継続計画)の対策も必要となりますし、そういう意味でも企業は自社サーバを分散していく。所有より利用する方が重要になっていきます。

  • 松江データセンターパーク外観

  • IIJが独自に企画・開発したITコンテナモジュール「IZmo
    (イズモ)」(右)と空調コンテナモジュール(左)。
    冷却に外気を利用するので、空調にかかる消費電力を大幅
    に削減することができる

なぜ松江をコンテナ型データセンターの最初の場所に選ばれたのでしょうか。

鈴木:電力特区で県庁所在地ですし、津波が少ない日本海側。しかも酒や魚が本当に旨い(笑)。そういうことをいろいろ考えて決めました。思い切ってインフラのコストや運用コストを下げるには、電力をどうやって安く調達するかが重要でした。ですから、始めから松江や福井でやりたかったのです。土地も安く拡張性もあります。現在のサーバの需要は予測できない伸びをします。それに対応するために都市型データ センターのビルを建てるのは大変です。しかし、コンテナ型だとサーバを詰め込んで運ぶだけなので、2、3ヵ月あれば設置できます。
「松江データセンターパーク」の場合も、用地を拡大していけます。拡張性が自在であるということ。リードタイムが短いこと。安い電力を使えること。この3つが選定の大きなポイントでした。

データセンターパークを国内の複数箇所に展開する予定

東日本大震災のあとは、需要が供給を超えている状態ではないでしょうか。

鈴木:サーバの需要が高まっています。特に、電力不足の問題から、データセンターの需要が高くなっています。現在、「松江データセンターパーク」のコンテナモジュールは2基ですが、9月には5基増設して、合計7基にします。これを都市型データセンターでやると2、3年はかかります。しかしコンテナ型データセンターなら設置にたった2ヵ月です。この差は大きい。需要が膨らんでいるのを見ながら増設していきますが、他のデータセンターで行っているクラウドを松江に持って行きたいですね。
現在の敷地は最大24基設置できます。ひとつのコンテナで9ラック(360サーバ)または10ラック(400サーバ)。24基で最大9600サーバ。こうしたコンテナ型データセンターをうまく使ってコストを下げれば、サービス価格にも反映できます。

どこにサーバを置くかによってサービス価格も変わってくるのですね。

鈴木:電力コストが違いますからね。建設コストも土地のコストも関係します。設備を作るときのコストと、電力を中心とした運用にあたってのコストにより、サービス価格も変わってきます。もちろん、どこにデータセンターがあってもいいように、特定のデータセンターに何かあったときでも別のデータセンターが使えるように、ネットワーク化を行います。データセンターパークは、すでに他の場所でも計画があります。クラウド環境に最適な、エネルギー利用効率の高いデータセンターパークを、今後日本の複数箇所に展開していく予定です。それらをネットワーク化された一つのデータセンターとして使えるようにします。

今回の「松江データセンターパーク」では、日本初ならではのご苦労もあったと思います。

鈴木:苦労はあまりなかったです。日本で初めてのことなので、難しいのは当たり前。課題はあっても解決すればいいんです。ただし、世界的にもPUEの数値でトップクラスを出そうという目標はありました。開発する人たちは、面白いことなら一生懸命やるんですよ。

米国のコンテナモジュールを開発しているあるトップメーカーが、松江を訪れて「商用でこういうのはすごい、世界でもない」と驚かれたそうです。

鈴木:コンテナ型データセンターは、Googleなど自社向け用はありますが、商用というのは世界でも珍しいでしょうね。

今後もデータセンタープロジェクトでCM Plus の経験をお借りしたい

今回、CM Plusをビジネス・パートナーに選んだ経緯をお聞かせください。

鈴木:昔、CM Plusの冨樫社長が大手エンジニアリング会社にいるときに、ゼネコンの上にエンジニアリング会社を立てて、当時アジアで一番大きい港北データセンターのコスト管理やプロジェクト管理を全部やってもらったことがあります。当時は、ネットワーク上にシステムがのるので、ネットワーク環境のよいところにデータセンターを設置するという考え方が一般的で、都市型データセンターを横浜の港北に作りました。

ゼネコンさんもよくやってくれましたが、冨樫さんはそれ以上によくやってくれました。お陰で2002年に、日本で一番素晴らしいデータセンターができました。緑が見えるデータセンター、居心地のよいデータセンター、倉庫ではなくそこで作業する人にも優しいデータセンターです。数百億円かかりましたが、先進的で今となってもまだ新しい。あの時期に、あんなに大きなデータセンターを手掛けた経験を持つ人はいません。その後、何ヵ所かデータセンターを作りましたが、そこでも冨樫さんにお世話になりました。冨樫さんの信頼できる人柄が気に入り、それからのお付き合いです。

コンテナモジュール設置の様子。設置はコスト高となる大型クレーンを使わず、安全かつ経済的な方法でコンクリート基礎の上を電動治具により所定の位置まで移動させる斬新な工法を採用

今回のプロジェクトにおけるCM Plusの役割は何でしょうか。

鈴木:IIJは、企画したり設計したりするのはよいのですが、データセンターをプロジェクトとしてエンジニア リング的に作っていくという能力はありません。そういうのはプロに頼んだ方が、よいものができます。今回も餅は餅屋だから ということで、CM Plusさんにプロジェクト・マネジメント業務とコンストラクション・マネ ジメント業務を依頼しました。そうすればコ ストも適正になりますしね。実際、すごくコ ストを下げていただきました。しかも、ゼネ コンさんを始め協力企業さんも納得ずくで やっていただきました。

最初依頼するときに、社長自らCMPlus にお電話されたそうですね。

鈴木:「松江データセンターパーク」を作ることが決まったから、すぐ連絡をしました。こういうのは、やはりプロに頼まなければなりませんので。でも会社に電話したときは、IIJの鈴木とは思われなかったみたいですよ(笑)。

今回のコンテナ型データセンタープロジェクトにおけるCM Plus の評価をお願いします。また、今後、プロジェクトにどういった役割を期待されますか?

鈴木:素晴らしいの一言です。本当によくやっていただきました。IIJは今後もデータセンターを数多く作っていかなければなりません。今回はコンテナ型データセンターでしたが、今後もいろいろな技術や利用形態の変化があると思います。その都度、インフラのあり方も変わります。例えば、昔のデータセンターは、1ラック当たり2KVAの電源設備が普通でした。今では、8KVAになっています。新しいデータセンタープロジェクトでは、やはりCM Plusさんの経験をお借りしたい。大手エンジニアリング会社に頼んでもいいのですが、担当者の顔が見えないことも多いのです。IIJやうちの社員にとっては、顔が見える優秀な人にやってもらうのがとてもハッピーなことです。IT分野は、最終的にはインフラ産業になります。ですから、今後も一緒にプロジェクトを考えてもらいたいですね。

最後に、鈴木社長は今後どのようなことに挑戦したいと思われていますか。

鈴木:データセンターは、コンテナ型ばかりではありません。どんなデータセンターが最適かというのは、まだ解がありません。また面白いことをやりたいですね。先日、医療画像データを分割して複数のデータセンターに分散して保管し、データ を合わせたときにそれが何か分かるという、従来にはない認証の仕方を発表しました。データベースの管理ができるものを作り、あちこちに分散したデータを瞬時に束ね結合し、一つの画像にする。情報をストレージする技術と、ネットワークで一挙に束ねる技術。これはIIJの得意とするところですから拡販していきたいですね。あとは、ストレージのインターフェイスを改善するなど、より企業が使いやすいクラウド環境を実現していきたい。そうしたときに、どういうデータセンターがいいのか。データがどこにあっても瞬時に集まるなら、本当のデータをどこに置いておくのか。そう考えると、データセンターのコンセプトも変わってきます。その中で何が最適かを見つけて、IIJならではのサービスを提供していきたいですね。

株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ )様
プロフィール
代表取締役社長
鈴木 幸一
設     立
1992年12月
本     社
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町
1-105 神保町三井ビルディング
資  本  金
142億9500万円(2011年3月末現在)
売  上  高
連結824億1800万円(2011年3月期)
従 業 員 数
連結 1,944名(2011年3月末現在)
事 業 内 容
インターネット接続サービスおよびネットワーク関連サービスの提供、ネットワーク・システムの構築・運用保守、通信機器の開発および販売、ATM運営事業
U  R  L
http://www.iij.ad.jp/
松江データセンターパーク概要

ファシリティ


敷地面積:約8,000㎡
ITコンテナモジュール数:最大24基
ラック数:最大216ラック
ユーティリティハウス(耐火構造):
オペレーション室、電気・UPS室、通信機械室等


電気設備

受電容量:2,000kVA中国電力より異変電所からの現用/予備2系統受電
非常用発電機:有り(ディーゼル即起動型)
UPS:N+1構成


消火設備

火災予兆検知システム
N2ガス消火設備


セキュリティ

敷地侵入検知、監視カメラ、入退室管理を完備
24時間常駐員による監視


工 期

第1期:2010年9月〜2011年4月

株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ )様の
松江データセンターパークプロジェクトにおける
CM Plus の役務
A.基本計画支援役務
  • 基本計画作成
  • 基本設計の条件設定・特記仕様書作成
  • 官庁申請の支援
B.プロジェクト・マネジメント/
  • コンストラクション・マネジメント役務
    • 1. 発注支援役務
    • ・見積引合い図書の作成
    • ・見積書(コスト)の評価v
    • ・バリュー・エンジニアリング/コストダウンの提案
    • ・工事契約、価格交渉支援
      2. 設計管理支援役務
    • ・建築、空調設備、および電気設備の詳細設計の管理
    • ・IT/空調コンテナモジュールの搬入計画立案
      3. 工事管理役務
    • ・工事全体遂行計画作成の支援
    • ・工事管理(品質・スケジュール・コスト)
    • ・設計変更の管理
    • ・工事予算の管理
    • ・工場検査立会い
    • ・IT/空調コンテナモジュールの搬入
       据付け計画の支援、および立会い
    • ・総合停復電試験の支援・立会い
    • ・検収、ならびに引渡し検査の支援・立会い
      4. ファシリティ・マネジメント支援役務
    • ・初期施設立上げに関する支援
    • ・施設運用・運転に関する支援
    • ・施設保全計画の作成支援

    ※この記事内に掲載の情報はインタビュー当時のものとなります。

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